Fossa Chocolate |品質と商品開発にこだわるシンガポール最初のクラフトチョコレート

左からCo-FounderのYilina、Jay、Charis。Fossa Chocolateはこの3人が立ち上げたクラフトチョコレートのブランドである。チョコレートへの熱いパッションがある3人。それぞれのバックグラウンドとスキルで協力し合い、チョコレートの製造から成形、撮影、パッケージデザイン、SNS・WEBサイト運用まで全てを担当しているという。

左からCo-FounderのYilina、Jay、Charis。Fossa Chocolateはこの3人が立ち上げたクラフトチョコレートのブランドである。チョコレートへの熱いパッションがある3人。それぞれのバックグラウンドとスキルで協力し合い、チョコレートの製造から成形、撮影、パッケージデザイン、SNS・WEBサイト運用まで全てを担当しているという。

筆者の私がFossa Chocolateに出会ったのは、2019年に開催されていたポップアップイベントの会場である。素敵なパッケージに惹かれて思わず手に取った。会場では、JayとCharisがブランドのストーリーを紹介してくれたことが記憶にまだ新しい。

今回は、シンガポールでサステナブルで高品質なチョコレートを開発しているFossa Chocolateの3名にインタビューをさせていただいた。

Fossa Chocolateの名前の由来は何ですか?

Yilina - Fossa (フォッサ)はマダガスカルの森に生息する動物です。5年以上も前に、私たちが最初に味わったクラフトチョコレートバーもマダガスカル産のカカオから作られていました。このチョコレートは、カカオと砂糖だけで作られているのに、フルティで豊な味がしたのです。カカオと砂糖だけで作られたとは思えないほど、私たちの想像を超えたクラフトチョコレートに感動しました。

写真提供:Fossa Chocolate

写真提供:Fossa Chocolate

フォッサは、軽快で機敏な動きをし、獰猛でワイルドな性格で知られています。これは、私たちのチョコレート作りのアプローチに似ています。私たちは、大胆でありながら心を揺さぶるようなおいしいフレーバーを生み出すために、常にチャレンジしています。私たちの手作りのアーティザンチョコレートは、チョコレートに使用されるとは想像もできないような食材が使われています。

そのような背景から、私たちのブランドを「Fossa Chocolate」と名付けました。

Fossa Chocolateがつくるクラフトチョコレートとは何ですか?

Yilina - 私たちは、持続可能な方法で調達されたカカオ豆から上質なチョコレートを作ることに情熱を注いでいます。私たちは、さまざまなカカオの原産地が提供するユニークな風味を引き出すことに重点を置き、豆をローストし、少量ずつ挽いてテンパリング(温度調節)し、手作業でチョコレートバーに仕上げています。このプロセスは時間がかかりますが、私たちはこのプロセスを大切にしています。チョコレートを食べれば、その価値に納得していただけると思います。

写真提供:Fossa Chocolate

写真提供:Fossa Chocolate

Fossa Chocolateには3つの精神があります。

1つ目は品質と倫理的な調達です。私たちのカカオはすべて、人間による搾取が行われていないものを使用しており、工業メーカーが使用する一般的なコモディティグレードのものは使用していません。品質とクラフトマンシップにこだわる農家や流通業者から、世界のトップ5%のプレミアムなカカオを購入しており、自然なカカオの深い味わいと複雑さを楽しむことができます。

2つ目は、添加物や代用品は一切使用していません。シングルオリジン(1箇所の生産地で収穫されたカカオ豆で1種類のチョコレートを作ること。)のダークチョコレートは、原材料がカカオと砂糖の2つだけという最も純粋な形で提供されています。香料、植物油、乳化剤、化学薬品などは一切使用していません。これは、オーガニック/ビーガン/ヘルス&ウェルネスの消費者に向けたものです。

写真提供:Fossa Chocolate

最後は大胆なフレーバーです。お客さんは、私たちが提供する想像もできなかった美味しいフレーバーを楽しみにしています。私たちのアーティザンチョコレートは、お客さんがチョコレートの素材として使用されるとは到底予想もできないような素材を使用しています。1~2ヶ月ごとに新しいフレーバーを発売し、お客様を飽きさせない工夫をしています。

どのような経緯でFossa Chocolateのブランドを立ち上げましたか?

Yilina - Fossa Chocolateは、2017年に立ち上げました。元々は、自分たちのプロジェクトとしてスタートしました。様々な産地からカカオ豆を取り寄せ、自宅でチョコレートを作っていました。

最初は、家族や友人に私たちのチョコレートを提供しました。当時、シンガポールでは毎週末いろいろな場所で小規模のポップアップのイベントがあり、私たちもよく出店をしていました。このようなポップアップイベントは、ローカルのクリエイターや個人のメーカーが、友人や家族以外に商品をお披露目する良い機会でした。

写真提供:Fossa Chocolate

写真提供:Fossa Chocolate

そういったポップアップイベントで、私たちも直接お客さんにFossa Chocolateのブランドのストーリーや、仕入れから製造方法、カカオ豆の違いなどを伝えることできました。そのうちに、お客さんも少しずつ興味を持ち始めていると実感できました。

特に好評だったのは、私たちが開発したSalted Egg Cereal(ソルティッドエッグシリアル)フレーバーで、当時シンガポールでもとても流行っていた味です。

写真提供:Fossa Chocolate

その頃は、それぞれフルタイムの仕事もあったので、平日の仕事後と週末にチョコレート作りをしていました。私たちはすぐにビジネスを始めたわけではなく、趣味から始まり少しずつお客さんからの注目が増えていき、本格的にチョコレートの販売を始めることになりました。

趣味からビジネスに変わった契機は何でしたか?

Yilina - 趣味からビジネスに転換したタイミングは、商品の注文が増え、製造が追いつかなくなった時です。注文に対応するためにさらに時間が必要になりました。また、海外からの注文も増えてきました。

そのタイミングで、もしFossa Chocolateを成功させたいなら今だろうと確信し、それぞれフルタイムの仕事を退職しました。

ビジネスをはじめて直面した課題は何かありましたか?

Yilina - クラフトチョコレートの価値をシンガポールの人たちに理解してもらうことです。私たちが提供するクラフトチョコレートは$10程度します。一方、一般的なスーパーで販売されている安価なチョコレートは$3程度です。その差が生まれる理由を理解してもらう必要がありました。私たちのストーリーをお伝えすると、驚く人も多かったです。

写真提供:Fossa Chocolate

写真提供:Fossa Chocolate

当時はシンガポールにクラフトチョコレートのマーケットが存在していなかったので、ゼロから市場を教育する必要がありました。私たちは一人ひとりに口頭で説明をしました。そこで私たちを信じてくれたお客さんは、彼らの友人にもシェアしてくれました。この一連のプロセスには時間がかかりました。

今日でさえも、シンガポールではクラフトチョコレートについてまだまだ認知と理解が足りていないと感じています。

Fossa Chocolate のチョコレートブランドをどのようにポジションニングしていますか?

Yilina - 私たちのユニークポイントの1つは「フレーバー」です。シンガポールのフレーバーだけではなくて、様々な種類の味を作っています。特にアメリカでは、「アジアのフレーバー」として人気です。

例えば、前述したSalted Egg Cerealは、アジア、シンガポール、中華、香港、フィリピンで普段親しまれている味を再現しており、アジアのフレーバーを代表しており、アメリカでもベストセラーの商品です。

多くのアメリカのお客さんが、ソーシャルメディアで投稿し、Fossa Chocolateをタグ付けしており、口コミで広がりました。

写真提供:Fossa Chocolate

写真提供:Fossa Chocolate

しかし、私たちはとりわけ「アジアのフレーバー」チョコレートとしてポジショニングしているわけではありません。私たちが目指していることは、「チョコレートを食べる度に、思い出に残る体験を提供すること」です。それは、フレーバーであったり、パッケージのデザインであったりします。多くのお客さんがギフト用としても購入されており、思い出に残る体験が生まれています。

新しいフレーバーを作る際には、どのようにインスピレーションを受けているのですか?

Jay - 商品開発はFossa Chocolateの真髄です。私たちは品質にこだわり、最高の素材を使用します。世界中から味のインスピレーションを受けて、商品開発をします。

Fossa Chocolateが新しいフレーバーを作るには、2つの手段があります。

1つ目の手段は、レストランやホーカーセンター(シンガポールの屋台)の料理の味を再現する方法です。

2つ目の手段は、食材・素材からインスピレーションを受けて味を開発すること方法です。

写真提供:Fossa Chocolate

写真提供:Fossa Chocolate

コロナの前までは、毎年旅行に行き、新しいフレーバーの開発をしていました。「えびカツオ」もその一つです。日本の漁港の新鮮なシーフードの味からインスピレーションを受け、シンガポールに帰国してから、味の開発をしました。

このように、旅行先の味を表現したチョコレートは、食べた瞬間に旅行先の思い出が蘇ったり、旅行をしたことがない人も旅行気分を味わえたり、旅の体験を提供することができます。

新しいフレーバーを作る際の商品開発について教えていただけませんか?

Jay - チョコレートの作り方はたくさんあります。一般的なチョコレートメーカーは、チョコレートができてからフレーバーを加えています。

しかし、Fossa Chocolateでは、カカオ豆からチョコレートができるまでの全工程(選別・焙煎・摩砕・調合・成形)を 自社工房で一貫管理して製造しています。

したがって、フレーバーをチョコレート作りの早い段階で加えることができます。

カカオ豆を焙煎する前に、ウイスキーやラムを加えたり、焙煎直後に、薫製をさせることもできます。

このように、カカオ豆から自社工房で一貫管理して製造するため、完璧に滑らかな舌触りで、ユニークなフレーバーを再現することができます。

写真提供:Fossa Chocolate

写真提供:Fossa Chocolate

WEBサイトにも掲載していますが、茶葉を使用したチョコレートを多数製造しています。茶葉を挽いて、製造工程の初期段階で加えるので、滑らかな舌触りと濃厚な味を再現することができます。

Fossa Chocolateではコラボレーションも数多くされていますよね。詳しく教えていただけませんか?

Jay - はい、たくさんのブランドやレストラン、サプライヤーとコラボレーションして新商品を開発しています。茶葉は、世界中の高品質な茶葉を取り扱っている友人から買い付けています。食材・素材を選ぶ際に、私たちはとにかく品質にこだわっいます。

私たちのコラボレーションには2種類あります。

1つ目は、有名なブランドとのコラボレーションで、コラボレーションするブランドのためにカスタマイズしたチョコレートを開発します。

2つ目は、F&Bやサプライヤーとのタイアップです。料理や食材をチョコレートで表現するもので、私たちもワクワクするようなプロジェクトです。

以前、BBQレストランとコラボレーションした際に、薫製の方法を学びました。その薫製の手法が、まさかチョコレートにも適用できることは想像もつきませんでした。

写真提供:Fossa Chocolate

写真提供:Fossa Chocolate

私たちにとって、チョコレートは「キャンバス」です。チョコレートのキャンバスで、様々な食材・素材の味を表現し、人々に知ってもらうきっかけを作りたいです。

最近は「お茶のカジハラ」という日本のお茶ブランドとコラボレーションしました。日本の食材を仕入れているパートナーサプライヤーが、実は大のお茶好きでもあって、紹介していただきました。昨年、洪水によって農園が被害を受けたそうで、パートナーから農園を支援したいと聞きました。

実際にお茶のカジハラの茶葉を使用してみたところ、とても素敵な風味がしたのです。そこでこちらの茶葉を使用することにしました。それは、シンガポールと日本の両方で大盛況となりました。

私たちがコラボレーションをする際には、様々な判断要素がありますが、マストの条件はそのコラボレーションがユニークで興味深いこと。私たちは、まだ認知されていないもので、高品質なものを使用します。新しい食材・素材をチョコレートで表現することはチャレンジングで、私たち3人もワクワクします。

新しい商品で現在企画していものは、インディゴ(藍染)です。食用のインディゴがあることをご存知でしたか?日本の福島には食用のインディゴがあり、私たちも驚かされました。しかも、このインディゴはとても美味しかったのです。

数あるフレーバーの中で、どのフレーバーを再現することが最も難しかったですか?

Jay - フレーバーを開発する上で最も難しいことは、現存する「料理の味」を表現することです。特に、シンガポールの辛くて有名な「マラ(Mala)」の味を開発することは難易度が高かったです。なぜなら、お客さんはすでに味を知っているので、味に対する期待値がとても高いからです。その味を表現できなければ、お客さんをがっかりさせてしまいます。

写真提供:Fossa Chocolate

写真提供:Fossa Chocolate

一般的なシンガポールのマラ料理には、いろいろな香辛料が使用されています。しかも、レストランによって味や辛さが少しずつ違うのです。辛さのレベルにも違いがあります。私とCharisは辛いマラ料理が好きなのですが、 Yilinaはマイルドなマラ料理を好みます。したがって、大衆が好むちょうど良い辛さのレベルを見つけることはチャレンジングでした。

Fossa Chocolateでは、どのようにマーケティングコミュニケーションをしていますか?

Yilina - 前述しましたが、私たちは、自社の店舗を持たないので、多くのイベントに出店してお客さんに直接Fossa Chocolatenおストーリーを伝えていました。

しかし、コロナによって状況は一転し、イベントが軒並みなくなってしまい、これまでのようなコミュニケーションが難しくなりました。

そこで今ではワークショップを定期的に開催しています。私たちのワークショップに参加すると、チョコレートの製造工程について学ぶことができ、いかに1つ1つのチョコレートが大切に作られているのかが分かります。私たちのチョコレートは決してフレーバーだけが特別ではなく、提携先のカカオ農家の生産方法であったり、サステナブルな仕入れ方法であったり、質の高いカカオ 豆の選定であったり、プレミアムなチョコレートを作るためには一連の工程があります。私たちのワークショップでは、チョコレートに関する質問に対して何でも答えますので、チョコレートの理解を深められます。

また、新商品をローンチする際には、使用されている食材やフレーバーに関して、できる限り多くの情報を提供しています。仕入れから製造までのプロセスを透明にすることで、Fossa Chocolateのチョコレートの価値に共感し、なぜ高価なのか納得していただけます。

写真提供:Fossa Chocolate

どのようにしてビジネスを成長させてきましたか?

Yilina - 心強いパートナーの皆さんのおかげで成長できました。私たちが提供する価値や信念に共感し、私たちのチョコレートを大切に扱ってくださるパートナーに感謝しています。

ビジネスを立ち上げて以降、シンガポールにあるローカルの素敵なカフェや小売店、海外のディストリビューターなどが私たちを信じ、商品を取り扱ってくれました。当時は、まだまだFossa Chocolateブランドは認知されていませんでしたが、それでも私たちを信じてくれたのです。

例えば、私たちのチョコレートを扱っているカフェではFossa Chocolateを店頭に置いて、バリスタがコーヒーを作る時にFossa Chocolateのストーリーをお客さんにお話してくれていました。

私たちは自社のお店を持っていません。その点では、お客さんとなかなか接点が作りにくいという難点がありました。ですから、私たちにとってパートナーはなくてはならない存在です。私たちはこのような信頼できるパートナーに出会えて光栄です。

シンガポール人はローカルブランドを選ぶようになると思いますか?

Yilina - シンガポールは、転換期にきていると思います。おそらくシンガポールに限らず世界中でもトレンドになっていると思いますが、ここ数年間で地元をサポートする動きがあります。私たちも例外ではなく、前よりも多くのシンガポール人が私たちのブランドを購入してくれています。

写真提供:Fossa Chocolate

写真提供:Fossa Chocolate

私たちはギフトボックスを販売しているのですが、その中に「フィードバック」ができる小さな紙を入れています。そこからわかったことは、多くのローカルのお客さんは、私たちにローカルのブランドともっとコラボレーションしてほしい、という要望があることがわかりました。

将来はどんなブランドを目指していますか?

Yilina - Fossa Chocolateはシンガポールのブランドとして、シンガポールを代表するブランドになりたいです。現在、シンガポールで有名なローカルブランドは、1970年代〜1980年代に誕生したものばかりです。

私たちは他のブランドと違って、ブランドの立ち上げ当初はローカルよりも海外で知られるようになりました。私たちが母国シンガポールに対して積極的にアプローチし始めたのは最近のことです。シンガポール人は、まだ私たちのブランドを知らない人もいると思います。

写真提供:Fossa Chocolate

写真提供:Fossa Chocolate

これから数年間に渡って、私たちの世代を代表するブランドになりたいです。シンガポール人やシンガポールに住む人が、私たちのブランドをシンガポールブランドとして誇らしく思ってもらえるようなブランドに育ててていきたいです。


最後に

今回は、Fossa Chocolateの3名にインタビューをさせていただきました。趣味から始めたクラフトチョコレート。チョコレート作りに彼らのパッションがあったからこそ、シンガポールから世界中で販売されるまでに至ったのだろう。

元々シンガポールにはクラフトチョコレートの市場がなかったので、一人一人にFossa Chocokateのストーリーを伝えていった。ポップアップイベントやワークショップはその例であるが、愛されるブランドつくりには価値観を共感してもらい、ブランドを好きになってもらうことで、価格は高価でも購入してくれる。

Fossa Chocolateはシンガポール生まれるブランドとクラフトチョコレートで日本でも購入できるそう。ぜひ一度、お手にとってみてはいかがだろうか。

Fossa Chocolate WEBサイト:https://www.fossachocolate.com/

Fossa Chocolate Instagram:https://www.instagram.com/fossachocolate/

Fossa Chocolate Facebook:https://www.facebook.com/fossachocolate

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